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退屈な日常とか、虚像の世界とか

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『優勝はマサラタウンのサトシ選手ーっ!!』

熱の篭った実況に画面の向こうで歓声が沸き上がる。
そして、画面に映された少年は彼の元に駆け戻ってきた電気鼠を自分の肩に乗せると、弾けるような笑顔になった。

 

「優勝かあ・・・・相変わらず凄いわね・・・」

感嘆の息と共に言葉を吐き出し、授与された優勝トロフィーをテレビカメラに見せつけるサトシに軽く口角を上げる。


私がサトシ達との旅を止めて7年。

サトシは成長した。
時と共に体が大きくなって、そしてそれ以上に多くの経験によって内面的に大きくなった。
彼が幼い頃から抱いていた夢を叶えるのもそう遠くはない。

それは、共に旅をした仲間としてとても嬉しいことのはずなのに。

心の中では、喜びと嫉妬と寂しさが入り混じった、よく解らない感情が渦巻いている。


ジムリーダーの仕事に不満がある訳ではない。
だけど。
私だって夢を叶えたい。

その気持ちを抑えてジムリーダーの役目を果たさなくてはいけない自分と違って、夢の実現のために経験を積むことができるサトシに対する嫉妬。
サトシが成長するに従って、遠い過去の物になっていく自分と過ごした時間を、自分の存在を彼は忘れてしまうのだろうという寂しさ。

その感情を自分の中に見つけた時、私はサトシを追うことをやめた。
どんなに追いかけても、この手がサトシに届くことはないと知ってしまったから。


喜びと嫉妬と寂しさと、それらを抱く自分に対する嫌悪感。


「ルリ・・・」
「ごめん、ルリリ。何でもないよ、大丈夫」
そんな私の気持ちを感じ取ってか、慰めるように体を擦り寄せてきたルリリに微笑み、震える手でその体を抱きしめた。



 

僕は空を見上げることしかできなかった
(手を伸ばすなんて、)(なんて愚かな行為だったのだろう)

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