Repeat:
退屈な日常とか、虚像の世界とか
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どうすれば君が振り向いてくれるのか。
それを考えてこれしか思い付かない自分に嫌気が差す。
そう思いながら鼻につく強い匂いに眉を寄せ、店のガラスに映る前髪を分けた自分の姿に息を吐き出す。
───そう。考えた結果のあいつの真似。
悔しいことにあいつは成績優秀で女の子から人気があって、その女の子達曰くカッコいい(らしい)。
性格はすげえムカつくけど、あいつは俺が持っていないものを全部持っている。
そんなあいつに惚れている君を振り向かせる作戦を無い頭で考えて、考えついたのがあいつの真似をすることだった。
だけど今から頭をよくするなんて無理だし性格や顔なんて変えられるわけない。
悩んだ挙げ句、選んだのが「前髪」。
「・・・・なにやってんのかなあ、俺ってば」
しかしいざ作戦を実行した自分を見て、湧き上がってくるのは自分に対する呆れのみ。
もう一度深く息を吐き出し、滑稽な自分の姿から視線を逸らし、
「なにやってんのよ?」
「わあああっ!!?」
突然背後からかけられた声に大声を上げ、ばっと後ろを振り返る。
「さ、サクラちゃん・・・!」
そして、ばくばくと速いスピードで心臓が鼓動する音を聞きながら、目を見開き驚いた顔で見るサクラちゃんの名前を口にする。
「お、驚かさないでほしいってばよー」
「こっちが驚いたわよ・・・・ん?」
抗議の言葉を述べてさっきとは違う安堵の息を吐き出す。
そんな俺にサクラちゃんは不服そうに言葉を返して、そして最後に疑問符を上げた。
「なに、それ。イメチェン?」
訝しげに問うてくるサクラちゃんに瞬きをし、その視線が俺の額らへんに向いていることに気づき、ばっと凄い勢いで両手を上げる。
「い、いやっ、な、何でもないってばよ!」
上げた両手で前髪を隠し、サクラちゃんの視線を遮断する。
汗を浮かべながら引き攣った笑いを作った俺にサクラちゃんは不可解そうに眉を寄せ、
「いつもの方が良いわよ」
不意に一言。
その言葉が理解できず、え?と間の抜けた声を出すとサクラちゃんはしまったという感じにしかめ面になって顔を背けた。
その頬がいつもより赤く見えるのは俺の勘違いなのかもしれないけれど。
さっきまで胸の中にあったマイナスの感情はいつの間にかどこかに行って、代わりにこそばゆい気持ちがあって。
「んじゃ、そうするってばよ!」
自然に孤を描いた唇でそう言って、前髪をぐしゃぐしゃにした。
なりたくても、なれない
(でも、そんな僕がいいって君が言ったから)(僕は僕のままでいようと思った)