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退屈な日常とか、虚像の世界とか

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「ツナ君?」
冷たい風が吹く夕日に赤く染まった世界の中、俺は最も会いたくなかった最愛の彼女に出会ってしまった。

目を丸くした京子ちゃんによって確かめるように呼ばれた自分の名前に唾を飲み込む。

「・・・久しぶり、京子ちゃん」
笑みを作って言葉を紡いだ俺に京子ちゃんは戸惑いながら数歩近づいて、

「その怪我・・・・どうしたの?」

俺の右腕を見ながら戸惑いがちに問いた言葉に、半袖のシャツの袖口から覗く幾重にも巻かれた真新しい包帯に心の中で舌打ちをする。
「えーっと・・・・」
そして言い逃れの言葉を探しながら口を開き、

「ごめん」
「・・・え?」

それを遮って京子ちゃんが言った謝罪の言葉に呆けた声を出す。
 

「余計なこと聞いちゃってごめんね」

顔を俯かせてそう言った京子ちゃんの表情は分からない。
ただ、嘲笑いを含んだその声に胸が締め付けられて。

京子ちゃん、と出しかけた言葉は赤い世界で作られた笑顔を前に君に届くことはなかった。

「じゃあね、ツナ君」
バレバレな作り笑顔のままそう言って、呆然と立ち尽くす俺を置いて歩き出す。
赤い世界に小さくなるその背中を見つめて、知らず噛み締めていた唇を開く。

「ごめんね、京子ちゃん」
心配をかけてしまって。
何も話すことができなくて。
そんな哀しい笑顔をさせてしまって。


「ごめん・・っ」


誰の耳にも届かない謝罪の言葉は、滑稽な俺を嘲笑うかのように吹いた風に掻き消えていった。

 
 

悪いのはキミじゃなくて弱虫の僕なんだ
(だから、)(君から逃げる僕を許して下さい。)

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