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退屈な日常とか、虚像の世界とか

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昼下がり。
床に座り込んで本を読んでいたら、聞こえて来た足音に顔を上げる。

その直後、

「レン、聞いて聞いて!マスターが新曲くれたのっ!」

頬を上気させたリンが部屋に飛び込んで来た。

「あー、そう。良かったな」

そう返し、再び本に視線を落とすと、

「それだけっ!?」

リンの大声。
まあ、それはいつものことで、つまりはもう慣れたので特に反応はしない。
しないでいると、とことことリンが近付いてきて、

「いっ!?」

突然背中に乗られ、その勢いで本に顔をぶつける。

「リンー?」
「レンが悪いのー」

ご機嫌斜めな感じのリンの声に溜め息をつき、背中の重さを押し返す。

「あ、そだ」

その途中に、いきなりリンが退いたために仰向けに倒れそうになるのを必死で堪える。

退いたリンはというと、今度はオレの背中に自分の背中を合わせて座った。

「なに?」

リンの行動が分からず声をかけようとして、遮られた。
正確には、自分から口を閉じた。
リンが、歌い出したから。
その歌は、聴いたことのない歌で。

(新しい曲、か)

リンの柔らかな声で紡がれる音に、目を閉じ耳を澄ます。

(っていうか、これ)

耳に流れ込んで来た歌詞に目を開ける。

「ラブソングかよ」

そう呟くと、歌が途切れ背中にかかる重さが僅かに重くなった。

「メイコお姉ちゃんがレンに聞かせて来い、って言ったの」

そう言い、リンは小さく笑うのが背中越しに伝わって来た。
メイコ姉、何やってくれてんだよ・・・。

「で、どう?」
「音外れまくり。もっと練習してから来いよ」

リンの問いにそう返すと、間髪入れず頭を殴られた。
正直、かなり痛い。

「レンの馬鹿っ!もう歌ってあげない!」

リンはそう言い捨てると、部屋を飛び出して行った。
再び静かになった部屋で溜め息をつく。

頭の中で響くのは、リンの歌声。
そして、ワンフレーズ。

「早く気付いて、ねぇ…」

呟き、再び溜め息。

そう歌ったあいつは気付いてない。
オレの気持ちに。
不意に、意地悪く笑うメイコ姉の顔が頭の中に浮かぶ。
それを消す為に軽く頭を振り、そして膝の上に置いていた本を閉じる。


まったく。


立ち上がり、頭を掻きながら扉に向かう。


「いい加減、気付いて欲しいのはこっちだっての」


呟いた願いは、果たして何時叶うのだろうか。





背中合わせの恋の歌

(レンー、リン相当怒ってたわよー)(メイコ姉・・・楽しそうだね・・・)(ふふ、そう見える?)

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