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退屈な日常とか、虚像の世界とか

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「あ、サクラちゃん」

人波の中、視界に捕らえた見慣れた背中に、考えるより先に声が出た。

「ナルト」

大して大きな声では無かったけれどどうやら届いたらしく、サクラちゃんは振り返っておれを見つけると、足を止めておれが追いつくのを待っていてくれた。
近付くとサクラちゃんは左手に色々な物が入った、大きな買い物袋を持っていた。

「買い物?」
「そうよ。あんたは?」
「散歩」

サクラちゃんに言葉を返しながら、その手から買い物袋を取り、再び歩き出す。

早足に追いついてきて小さな声でお礼を言ったサクラちゃんに笑い返した。

 


「ナルト」

だいぶ歩いて人気が無くなった時、それまでおれの他愛も無い話を訊いていたサクラちゃんが、不意におれの名前を呼んだ。

「なに?」

ちょうど話が一段落したところだったから、特に何を思うこともなく尋ね返し、

「あんた、何か隠してない?」

疑問型ながらも確信を持ったサクラちゃんの声に、頬が引きつった。

「べ、別にないってばよ・・・・?」
「嘘」

何とか言葉を返すも、切り捨てられる。

「う・・・」
「ほら、言ったら?」

何言っても殴らないから、とそう言って綺麗な笑顔で笑ったサクラちゃんに、体が強張る。
黙り込んだおれを、サクラちゃんはただ見つめ、その―何故か悲しげな―視線に覚悟を決めて口を開く。

「―腕、ごめんってばよ」

おれの言葉にサクラちゃんは視線を白い包帯が巻かれた、九尾化したおれが傷つけた左腕に向け、小さく息をはくとヤマト隊長?と眉を寄せてそう言った。
その問いに頷くと、サクラちゃんは再び不機嫌そうに息をはいた。

「ナル―」
「サクラちゃん」

何か言おうとしたサクラちゃんの言葉を遮り、名前を呼ぶ。
呼んだは良いが口籠もってしまい、頭の中のごちゃごちゃした想いをまとめて、ゆっくりと口を開く。

「おれ、またサクラちゃんのこと傷つけちゃうかもしれない」

ヤマト隊長にはああ言われたけど、またいつ九尾化するかなんて分からない。

だから、本当ならすぐにでもおれから離れた方が良いんだと思う。

だけど、おれは、まだサクラちゃんと離れたくない。一緒にいたい。


「だから、」

 

 

傷つけることしかできないけど
(これからも、隣にいて下さい)

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