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退屈な日常とか、虚像の世界とか

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海賊なんて、みんな死ねばいい。

自分達の欲しいものを手に入れるために争って、殺し合えばいい。
ただし、そこに一般人を巻き込むな。
死ぬなら、勝手に死ね。


そう思うくらいに、私は海賊という存在が嫌いだ。

それほどまでに嫌いな海賊船に乗るのは、八年前に奪われた私の大切なものを下劣な海賊から取り戻すため。

馬鹿な海賊共を騙すために感情を殺して相手に媚びいり、吐きそうになるほどの嫌悪感を抑えて仲間を騙り、信頼を得る。

それも全部、あいつとの取引金額である一億ベリーを、お宝を盗むため。


そのために、私は仮面を被る。
獲物を見つけ、騙し、盗みを果たすまで。


すべてを失ったあの日から、口から出たのは嘘ばかり。
笑い方なんてとっくに忘れた。

覚えたのは、人を、自分を騙すこと。

でも、そんなの構わない。
辛いのは、私じゃないんだから。

 

一億ベリーまで、あと少し。


誰にも、自分にも聞こえないくらいの小さな声でそう呟く。
私の隣には、数時間前に立ち寄り、一騒動あった町で手に入れた、五百万ベリーは下らないお宝が入った袋。
着実に、ゴールへと近付いていることを実感して自然に頬が緩んだ。


「なんか良いことあったのか?」

不意に上から降って来た声に、弾かれたように顔を上げると、

「?そんな驚いた顔して、どうした?」

視界に入ったのは、ついさっき私が直したばかりの麦わら帽子を被った、一時的に”手を組んだ”男の、ルフィの顔。

「あんた、近いっ」
「おい、押すなって」

ぐい、とその顔を押して自分から遠ざけると、ルフィは文句を言いながらも一歩後ろに下がり、そこに座った。

「で、なんかあったのか?」
「お宝が手に入ったから嬉しいのよ」
「えー、肉じゃねえのかよー」
「違うわよ!」

つまらなさそうに唇を尖らせてそう言ったルフィに怒鳴り返し、お宝を体の後ろへと回す。

「何してんだ?」
「お宝盗られないようにしてるの」
「しねえぞ。そんなこと」
「どうだか」

不満げなルフィの言葉を切り捨て、視線を下に落とし小さく息を吸う。

下らない会話はもう終わり。
そう思って、いつものように感情を殺そうとして、


「おれは仲間の大切なもの盗ったりしねえ」


ルフィの、やけに真面目な声に息が詰まった。


「・・・・・・あっそ」

僅かな間の後、小さな声でそれだけ返て、


今度こそ仮面を被った。

 

 

わたしは望んで仮面を被る
(すべては、失ったものを取り返すため)

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