Repeat:
退屈な日常とか、虚像の世界とか
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今日は、久しぶりの休み。
だからといってしたいこともなく、昨日の任務が久々のAランクだったからか、まだ少し怠い体を休めるために惰眠でも貪ろうかと思っていたら、部屋にやって来た母親に買い物を頼まれ渋々外に出れば、雲一つない空からは太陽の光が燦々と降り注いでいた。
その眩しさと熱から逃げるために影のある場所を選びながらしばらく行くと、
「あ」
川沿いに生えた大木が作る、同様に大きな影の中に寝転ぶ、見知った姿を見つけた。
「ナルトー」
名前を呼び、足早に近付き
「・・・・・・・」
気持ち良さそうにいびきをかきながら爆睡しているナルトをしばらく見下ろし、その横にしゃがむ。
「ちょっと、風邪引くわよ」
いくら暖かくなってきたとはいえ、Tシャツ一枚とズボンという出立ちのナルトに、呆れを多大に含んだ声をかけるがナルトは呑気に寝たまま。
元から返答など期待していなかったから、それはいいが。
それより、
「・・・」
Tシャツから出ている腕に巻かれた白い包帯を食い入るように見つめる。
昨日の任務で負ったその怪我は、すぐに九尾の力によって治ったが、念のためにと私がナルトに包帯を巻かせた。
そういう私はといえば、大きい怪我こそないが、掠り傷などの小さな怪我は何か所にもでき、今もその痕が残っている。
何時だったかに、ナルトが私の傷を見て自分の治癒力が私に働けばいいのにと零したことがあった。
確かに、それは忍びである前に女の子である私からしてみたら結構魅力的な意見だった。
だけど、
「んぁ…」
不意に耳に届いた寝ぼけた声に、我に返る。
「おはよ」
「さ、サクラちゃんっ!」
うっすらと目を開けたナルトに声をかければ、慌ててナルトは体を起こした。
「どうしてここにいるんだってばよ!?」
「買い物の途中なの。怪我、大丈夫?」
「え、全然平気だってばよ?」
自分の腕に巻かれた包帯に視線を向けて、ナルトは不思議そうに答えた。
「これくらい九尾の力ですぐ治るってばよ。それより、サクラちゃんこそ大丈夫?」
「うん」
本当に心配そうに訊いてくるナルトが微笑ましくて、自然と笑みが零れる。
「それじゃ、私行くから。寝るのはいいけど、風邪引かないでよ」
「分かってるって。ほんと、サクラちゃんは心配性だってばよー」
ナルトの言葉に小さく笑い、膝に手を当てて立ち上がる。
「・・・そういえば」
踵を返し数歩行ったところで、少し大きめの声を出し、振り返る。
不思議そうに見てくるナルトと視線が合い、すぅと深く息を吸い、
「今度は隠すんじゃないわよ」
思っていたよりも大きく出た声に、ナルトの目が大きく見開かれた。
呆れてしまうほどに狼狽するナルトは口を開き、
「私は九尾の治癒力が嫌い」
それに被せるように言葉を並べる。
その言葉に、ナルトは口を半開きにしたまま私を見る。
ナルトの、九尾の力は。
すぐに傷が癒えるということは、確かに良いことではあるけど。
でも、それは、周りからしたらナルトが傷ついたという事実が分からないということで。
実際、私はナルトが怪我をしても、それが既に治癒しているがゆえに気付かないことが多い。
傷が治癒しているがゆえに。
ナルトがそのことを隠しているがゆえに。
私は、傷によってナルトが苦しんだことを知ることができない。
それは、
医療忍者である私にしたら、とてつもない恐怖で。
だから、
「もう隠さないで」
何故か泣きそうな笑顔をするナルトにそう言い、震える唇を噛みしめた。
あんたの治癒力には劣るけど、治療をさせて。
傷ついたなら、心配させて。
キミのためにできること
(どうか、隠さないで)(私が、今できる精一杯のことをするために)