Repeat:
退屈な日常とか、虚像の世界とか
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絶対に放さない。
誰にも渡さない。
半歩前を歩く灰原の姿を見ていたら、急にそんな想いが沸き上がってきて。
「ちょっと、江戸川君?」
不意にかけられた声に我に返り隣の灰原を見ると、灰原は迷惑そうに眉を潜めて俺によって握られた自分の手を見た。
「これは何なのかしら?」
「え、っいや・・・」
無意識の行動に咄嗟に言葉を返すことが出来ず口籠もると、灰原との間に変な空気が流れる。
動きの止まった俺に灰原は隠すことなく大きく息を吐き、掴まれた手を振りほどこうとして、
「手、あったまるかなって思って」
「はぁ・・・?」
慌ててその手を更に強く握った俺が紡いた言葉に眉を寄せて訝しげな表情をした。
「お前、手冷てえだろ。だから」
「あら、優しいのね。でも、結構よ」
そして灰原はやや吊り上げた目を俺に向け、早く放して言った。
「ああ、悪いな」
その視線に手を放すと、灰原は呆れたように本日二回目の溜め息を吐いた。
「・・・何笑ってるの?」
「ん、いや。別にー」
「・・・・・・・・変な人ね」
それを見て小さく笑った俺に一瞥をくれた後、灰原は遅刻するわよと言うと踵を返し歩き始めた。
(本当の理由、気づいてないんだろうな・・・)
その後ろ姿をしばらく見つめ、苦笑気味に笑うと随分離れてしまった灰原を追った。
とりあえず、笑っておこう
(彼女は鈍感だから、)(この気持ちを隠せるはず)
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